――東京から日常を切り替える場所の選び方
目次
はじめに|温泉は「癒やし」では足りない
温泉に行く理由は、人それぞれだ。
疲れを取りたい人もいれば、
非日常を味わいたい人もいる。
だが、年齢を重ねると、
温泉に求めるものが少し変わってくる。
私は、**癒やしよりも「調整」**を求めて温泉に行く。
仕事で張りつめた感覚。
判断を重ねて鈍った感覚。
日常のスピードに、少しだけズレを入れたい。
そのための温泉だ。

1|「調整に使える温泉」とは何か
調整に使える温泉には、共通点がある。
- 近すぎず、遠すぎない
- 混まない、あるいは混まない時間帯が明確
- 万能ではないことを隠さない
- 滞在中に「急がされない」
豪華である必要はない。
有名である必要もない。
むしろ、
評価が割れている温泉の方が、調整には向いている
ということも多い。
2|調整に「効いた」温泉たち
ときがわ温泉郷「とき川」
一日四組限定。
専用風呂。
人の手が省かれていない宿。
強アルカリ泉(pH11.3)の刺激は好みが分かれるが、
時間の流れが変わる感覚は、確かにあった。
探して行ったのではなく、
偶然たどり着いたことも含めて、
調整として成立していた温泉だ。
「偶然たどり着いた温泉が、結果的に一番調整になったこともある」
石和温泉「ホテルやまなみ」
1320円。
空いている。
サウナに一人。
それだけで、
もう十分だった。
調整に必要なのは、
高級感ではない。
邪魔されない時間だと、
この温泉は教えてくれた。
「人がいないだけで、調整は成立することがある」
大仁温泉「大仁ホテル」
昭和の時間が、そのまま残っている。
pH7.4の単純温泉。
露天から富士山。
そして、
長嶋茂雄が滞在したという、
使い込まれた歴史。
派手さはないが、
「人が長く使ってきた場所」には、
それだけで調整効果がある。
「人が長く使ってきた場所には、それだけで整う力がある」
3|調整に「ならなかった」温泉も書く
箱根・芦ノ湖「Hakone Hotel」
景色は素晴らしい。
立地も申し分ない。
運営も安心できる。
だが、
温泉は主役ではなかった。
露天のみ掛け流し。
内湯は循環。
朝湯では、ほぼ素湯に近い体感。
これは失敗ではない。
期待の置き方を誤っただけだ。
調整に使えるかどうかは、
温泉そのものより、
「何を期待して行ったか」で決まる。
「温泉が主役ではない宿もある。それは失敗ではない」
4|観光の隙間を埋める温泉
ふじやま温泉
フルスペックのスーパー銭湯型。
露天、サウナ、岩盤浴。
泉質は炭酸水素塩泉、pH7.3。
クセはない。
ここは、
主役になる温泉ではない。
だが、
観光が早く終わった日、
予定が少しずれた日には、
一日をきれいにまとめてくれる。
調整にも、こういう形がある。
「主役にはならないが、一日をきれいに締める温泉もある」
5|調整が効かなかった日も、記録する
伊豆半島、大雪、135号線
温泉で整えるつもりだった。
前日入りもした。
準備はしていた。
それでも、
自然と構造には勝てない日がある。
亀石峠。
スタック。
JAF待ち。
135号線への集中。
27時間運転。
この日は、
調整に行って、調整できなかった日だ。
だが、
この記録があることで、
「近い温泉」が
突然遠くなる瞬間を、
現実として理解できるようになった。
「調整に行って、調整できなかった日もある」
6|交通構造という現実
特に伊豆半島は、
交通が「線」で成り立っている。
- 国道135号線
- 伊豆縦貫道(未完成)
- 限られた鉄道
一箇所が止まれば、
すべてが詰まる。
不動産でも、温泉でも、
入口より出口を見る必要がある。
- 帰れなくなったらどうするか
- 車を置いて離脱できるか
- 駅に歩いて出られるか
調整は、
行く前から始まっている。
「温泉の前に、構造を見る必要がある」
7|ケース別・温泉の選び方
- 土曜の昼に思い立ったとき
→ 価格が安く、空きやすい日帰り温泉
- 夫婦二人で静かに過ごしたいとき
→ 組数制限・専用風呂のある宿
- 観光が早く終わったとき
→ 観光併設型のフルスペック温泉
- 心身ともに疲れているとき
→ 泉質より「邪魔されない時間」を優先
おわりに|調整は、贅沢ではない
調整は、
ご褒美でも逃避でもない。
次の判断を誤らないための、準備だ。
温泉は、そのための装置にすぎない。
だから私は、
良いことだけは書かない。
失敗も、違和感も、
そのまま残す。
それが、
自分にとっての
「調整に使える温泉」の記録だ。
