――成分表よりも、身体が先に知っていること

このページは、温泉の成分や効能を説明するためのものではありません。
温泉に通ううちに、自分なりに考えるようになった「泉質との付き合い方」を整理した記録です。

なぜ今、泉質を語るのか

温泉の記事を書くとき、
「泉質は何ですか?」
と聞かれることがある。

アルカリ性か、硫黄泉か、炭酸水素塩泉か。
pHはいくつで、効能は何か。

もちろん、それらは大切な情報だ。
だが、長く温泉に通っていると、
だんだんと違和感が生まれてくる。

――本当に、成分表どおりに温泉を感じているだろうか。

同じアルカリ性単純温泉でも、
ある湯は落ち着き、
ある湯はなぜか疲れる。

効能欄には「疲労回復」と書かれているのに、
出たあとにどっと疲れが出ることもある。

逆に、
特別な効能が強調されていない湯に入って、
なぜか判断力が戻り、
気持ちが静まることもある。

年を重ねるほど、
泉質は「知識」ではなく
付き合い方の問題なのだと思うようになった。


泉質とは、何を表しているのか

泉質とは、本来、
その湯がどんな性格を持っているか
を示す指標に近い。

アルカリ性単純温泉は、
刺激が少なく、肌当たりがやわらかいとされる。
硫黄泉は個性が強く、
身体に直接語りかけてくる。

だが、ここで大事なのは
「強い」「弱い」という序列ではない。

たとえば、
pH10を超える高アルカリ性の湯でも、
驚くほどマイルドな場合がある。
逆に、数値上は穏やかな湯でも、
落ち着かないことがある。

これは、
泉質が単なる化学成分ではなく、

  • 温度
  • 湧出量
  • 空気
  • その場の使われ方

と結びついて初めて、
一つの「体験」になるからだ。

数字は嘘をつかないが、
数字だけでは語りきれない

温泉とは、
成分と環境と時間の集合体だ。


美人の湯という言葉について

「美人の湯」「美肌の湯」という言葉がある。
アルカリ性の湯に多く使われる表現だ。

皮脂や古い角質を落とし、
肌がなめらかになる。
理屈としては、正しい。

だが、
中年の男が温泉に入って感じる「美」は、
もう少し別のところにある。

湯から上がったとき、
肌がつるつるしたかどうかよりも、

  • 余計な力が抜けているか
  • 呼吸が深くなっているか
  • すぐ次の行動を考えなくて済むか

こちらの方が、はるかに重要だ。

この意味での「美」とは、
整っている状態のことだと思う。

泉質は、
その整いやすさの傾向を、
静かに教えてくれる。


なぜ泉質は「調整」に効くのか

泉質が人生に効く理由は、
効能そのものではない。

それは、
人に「どう過ごせ」と要求しないからだ。

刺激の強い湯は、
短時間で反応を求めてくる。
元気なときにはいいが、
判断が鈍っているときには、少し強すぎる。

一方、
アルカリ性単純温泉のような湯は、
こちらのペースに委ねてくる。

早く出てもいい。
長く浸かってもいい。
何も考えなくてもいい。

この「自由度」が、
調整に向いている。

人生でも、仕事でも、
多くの場面では
「こうしろ」「次に進め」と迫られる。

温泉の泉質が与えてくれるのは、
その逆だ。

――今は、決めなくていい。

そう言ってくれる湯は、
実はそう多くない。


成分表をどう読むか

だから、このサイトでは、
泉質や効能を書くとき、
あえて断定を避けている。

「効く」「治る」とは言わない。
代わりに、

  • 長く入れた
  • 重さが残らなかった
  • 判断が戻った

といった体感を書く。

成分表は、
その体感を裏付ける
補助線として使う。

主役は、
あくまで身体の反応だ。


泉質を知ると、温泉は使いやすくなる

泉質は、強さの話ではない

泉質を理解すると、
温泉は「観光」から「道具」に変わる。

  • 疲れている日は、刺激の少ない湯
  • 切り替えたい日は、少し個性のある湯
  • 判断を戻したい日は、長湯できる湯

選び方が変わる。

そして何より、
「今日は合わなかった」
という判断ができるようになる。

それもまた、
温泉と長く付き合うための
大事な感覚だ。


泉質とは、性格のことだ

泉質とは、
効能の一覧表ではない。

その湯が、
どんな距離感で人と付き合うか、
どんな時間を許すか、
そういう性格の話だと思っている。

相性のいい温泉は、
無理をさせない。

そして、
無理をしなかった結果として、
少しだけ人生が楽になる。

それで十分だ。


温泉分析書

温泉の更衣室などの壁面に『温泉分析書』という温泉法の分析諸元が書かれたもの、これは温泉法18条で、温泉を公共の浴用又は飲用に提供する場合は表示が義務づけられている。表示がなければ温泉ではないし、偽装した場合は30万円以下の罰金。ところで、この分析書、専門家が見れば、入ったことのない温泉でも、色や臭い、お湯の触感までイメージ出来ると言う。わたしはそのような達人ではないので参考までに見るべき代表的なポイントを忘備録として以下にまとめておくことにする。


泉質の分類

  • 単純温泉:-刺激が少なく、肌触りが柔らかい(アルカリ性ならスベスベ)。
  • 塩化物泉(食塩泉): 塩分で皮膚を覆い、保温効果が高い(湯冷めしにくい)。
  • 炭酸水素塩泉: 皮脂を洗い流し、肌をスベスベにする美肌の湯(入浴後もスベスベ)。
  • 硫酸塩泉: 鎮静効果があり、肌の蘇生を助ける(肌がなめらかに)。
  • 含鉄泉(鉄泉): 赤褐色の「赤湯」が多く、貧血や更年期障害に(飲用も)。
  • 硫黄泉: 独特の匂い。角質を柔らかくしシミ予防に。
  • 酸性泉: 抗菌力が強く、皮膚病に効果的(肌を引き締める)。
  • 二酸化炭素泉(炭酸泉): 炭酸ガスが体温を上げ、血行促進(ぬるめの湯が多い)
  • 含よう素泉: 飲用すると、鉄欠乏性貧血症に。
  • 放射能泉: ごく微量の放射能は、むしろ人体に良い影響を与える。

泉質以外のチェックポイント

  • pH値: 7が中性。小さいほど酸性(肌を引き締める)、大きいほどアルカリ性(肌をスベスベに)。
  • 源泉温度・湧出量: 温泉の質を左右する重要な要素。 
  • ミリバル%: 陽イオン・陰イオンの合計に対する比率。この数値が高いほどその成分が濃い。
  • : 無色、黄色、黄褐色、淡黄色、など。
  • 清濁: 澄明、蛋白石濁、微混濁、など
  • : 無味、酸味、炭酸味、収斂味、から味、塩味、苦味、など
  • 臭い: 無臭、泥炭臭、腐臭、硫化水素臭、亜硫酸臭、石油臭、よう素臭、鉱物油臭、木材臭、など

温度による分類

  • 冷鉱泉(冷泉):25℃未満。
  • 低温泉(ていおんせん):25℃以上34℃未満。
  • 温泉(おんせん):34℃以上42℃未満。
  • 高温泉(こうおんせん):42℃以上。

「温泉」「鉱泉」「冷泉」の違いは、主に温度と成分で、法律(温泉法)と習慣が混在している。「鉱泉」は成分が多い地下水全般を指し、そのうち25℃以上のものを「温泉」、25℃未満のものを「冷鉱泉(冷泉)」と呼び分けるのが温泉法上の基本


ブログの中で「温泉」は天然温泉、冷鉱泉でも温泉分析表のある温泉施設の事を温泉としている。源泉掛け流し、循環式、加水加熱の場合も表示されている内容に忠実に分類しているが、間違いなどがあれば遠慮なくご指摘ください。水道水の加熱お風呂は銭湯といい、岩盤浴やサウナ・マッサージなどの複合施設はスーパー銭湯(人工温泉や輸送された天然温泉も)として、スーパー銭湯でも天然温泉の源泉ありは(源泉あり)としている。なお、浴場の写真は原則公式サイトにある場合はそのまま使用しているが、問題があれば通知いただければ削除します。

最近は、温泉を選ぶとき、効能よりも「無理をしなくて済みそうか」を先に考えるようになった。

投稿者 k.hayama

温泉巡りと不動産の仕事を通じて感じたことを記録するブログ。伊豆・関東近郊の温泉、調整に使える場所、判断の話を静かに書いています。

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